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東京地方裁判所 平成2年(ワ)4912号 判決

原告

株式会社チェスコム秘書センター

右代表者代表取締役

關田勝次

右訴訟代理人弁護士

大脇茂

白井久明

被告

笠原五夫

笠原幸子

笠原洋人

安田雅一

右被告ら訴訟代理人弁護士

井出隆雄

主文

一  原告の「被告らは、原告が電話による秘書代行業務委託契約を締結している顧客に対し、原告の顧客台帳等をもとに、もしくは原告の信用を毀損する方法により、被告との同契約の締結および締結方の勧誘をしてはならない。」との請求を却下する。

二  被告笠原五夫、同笠原洋人、同安田雅一は原告に対して、連帯して金五〇〇万円およびこれに対する平成二年五月三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告の被告笠原五夫、同笠原洋人、同安田雅一に対するその余の請求を棄却する。

四  原告の被告笠原幸子に対するその余の請求を棄却する。

五  訴訟費用は、これを三分し、その一を被告笠原五夫、同笠原洋人、同安田雅一の負担とし、その余を原告の負担とする。

六  この判決の第二項は仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求める裁判

一  原告

1  被告らは、原告が電話による秘書代行業務委託契約を締結している顧客に対し、原告の顧客台帳等をもとに、もしくは原告の信用を毀損する方法により、被告との同契約の締結および締結方の勧誘をしてはならない。

2  被告らは、各自原告に対し、一七九六万円およびこのうち金一二九六万円に対する平成二年五月三日から、うち金五〇〇万円に対する平成四年七月一日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  仮執行宣言

二  被告ら

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  原告の請求原因

1  原告は、電話の取次・書類作成・タイプ等の秘書業務の代行等を目的とする会社であり、株式会社ワコー(以下「ワコー」という。)は原告代表取締役が代表取締役を兼任する人材派遣、各種業務の代行等を目的とする会社であって、原告の一〇〇パーセント子会社である。

2(一)  原告は、昭和五八年以来、株式会社チェスコムが開発した転送機および転送元識別機(通商「RX」)を使用した電話による秘書代行業を、入会金三万円、業務委託料月額金三万円で行っている。

なお、電話による秘書代行業務とは、秘書代行を依頼する顧客に原告の秘書センターに転送する転送機を購入してもらって顧客の事務所等に設置し、顧客の事務所等に着信した電話を転送機によって原告の秘書センターに転送して原告の事務所でオペレーターが顧客の秘書として応対し、その後顧客にその内容を連絡するという業務であり、この場合、一契約者(一回線)当たり、秘書センター側にも一回線の電話回線が必要となるのであるが、「RX」を使用した場合、「RX」一台で一五契約ないし二〇契約を管理できるために非常に有利となる。

(二)  被告笠原五夫、同笠原幸子は、昭和六〇年一二月ころ以降株式会社テルステーション名義で電話代行業務の営業を開始しており、昭和六二年九月ころに転送機二台、転送元識別機(RX)一台を、同六三年三月ころに転送元識別機(RX)二台をそれぞれ株式会社チェスコムから購入している。

(三)  被告笠原洋人はワコーに昭和六二年三月二七日に入社し、平成元年四月三〇日に退職した者であり、その間原告に出向して昭和六三年三月までは転送機の取り付け、修理等の業務を行うサービス課に所属し、同年四月からは転送機およびOA機器関係のリース業務を担当していたものである。被告安田雅一は昭和六一年七月七日にワコーに入社し、同時に原告に出向して、平成元年二月まで秘書代行業務の営業を担当し、同年三月からワコーの子会社である株式会社日本テレコメディアにおいてテレマーケッティングの営業に従事し同年八月一五日に退職したものである。

3(一)  被告らは共謀のうえ、被告笠原洋人、同安田雅一がワコーに在職中ないしは原告に出向中から、原告の顧客台帳を利用して、株式会社テルステーション名義にて原告の顧客にダイレクトメールを送付したり、訪問をしたりして、従前に設置してある転送機をそのまま使用でき、入会金二万円、業務委託料月額二万円であるので原告より有利であるので原告との契約を切り替えるよう働きかけ、順次原告の顧客を奪っている。その具体的内容は別紙一覧表記載のとおりである。

(二)  被告笠原洋人は被告笠原五夫、同笠原幸子の子であり、被告笠原洋人が原告に勤務したのも、原告の電話による秘書代行業務のマニュアル、ノウハウ、顧客台帳等を得ることを目的としたものである。

(三)  被告笠原洋人、同安田雅一は、労働契約を締結しているワコーから原告に出向していたものであるから、原告に対して労働給付義務に付随する義務として服従義務、誠実義務、競業避止業務を追っているのであって、労働契約期間中は当然のことながら、労働契約終了後も一定の限度においてその義務を継続して負担している。

4(一)  平成二年二月現在、原告が契約している顧客からテルステーションとの契約に切り替えた顧客は三六件である。

(二)  前記のとおり、原告は月額金三万円の業務委託料を受託しており、被告らの行為がなければ、すくなくとも一年間は原告への業務委託が継続したものといい得るから、すくなくとも原告は被告らの前記行為により金一二九六万円の損害を被った。

5(一)  被告らは通謀して、別紙一覧表記載のとおり、虚偽の事実を告知して原告を中傷した。

(二)  これらは、いずれも原告に対する不法行為である。

(三)  原告は前項の各行為によって名誉ないし信用を毀損されたものであり、この無形損害は金五〇〇万円に相当する。

6  よって、原告は被告らに対し、(1) 原告が電話による秘書代行業務委託契約を締結している顧客に対し、原告の顧客台帳等をもとに、もしくは原告の信用を毀損する方法により、被告との同契約の締結および締結方の勧誘をしてはならないこと、ならびに、(2) 前記4項記載の金一二九六万円と前記5項記載の金五〇〇万円の合計金一七九六万円およびこのうち金一二九六万円に対しては債務不履行ないし不法行為の後である平成二年五月三日(本件訴状送達の日の翌日)から、うち金五〇〇万円については平成四年七月一日(原告の請求の趣旨変更申立書が送達された日の翌日)から、各支払済みまで民法所定年五分の割合による金員の支払いを求める。

二  請求原因に対する被告らの認否

1  原告の請求原因1は知らない。

2  同2(一)は知らない。同2(二)は認める。なお、被告笠原五夫は、知り合いの株式会社リレーホン東京営業所長を通じて電話取次代行に関する経営技術を習得したものである。同2(三)は認める。

3(一)  同3(一)は否認する。但し、別紙一覧表のうち、六の平成元年一〇、一一月ころ被告安田雅一が株式会社ジェイ・コミュニケイション・アカデミィを訪問したことは認める。

なお、被告笠原洋人、同安田雅一が、退職後に原告と競業活動をすることは職業選択の自由からしても当然認められるべきである。仮に一定限度において誠実義務を負うとしても、被告笠原洋人、同安田雅一はなんらの義務違反行為をしてはいないし、いわんや被告笠原五夫、同笠原幸子においては原告に対してなんらの義務も負担してはいない。

(二)  同3(二)のうち、被告笠原洋人と被告笠原五夫、同笠原幸子の身分関係は認めるが、その余は否認する。

被告笠原洋人は原告の入社面接試験の際にも同被告の父である被告笠原五夫の職業を担当者に告知して、原告もそれを了承のうえで採用した。被告笠原五夫は電話取次代行業のほかに公衆浴場業も経営しており、公衆浴場業は当時休業していたが、浴場の改築が完成したので、被告笠原洋人は電話取次代行業を手伝うために原告も了解のうえで平成元年四月三〇日付けで円満退職した。

(三)  同3(三)は争う。

4(一)  同4(一)は否認する。

(二)  同4(二)は争う。

5(一)  同5(一)は否認する。

(二)  同5(二)、(三)は争う。

第三  証拠関係〈省略〉

理由

一原告の請求原因1(原告が、電話の取次・書類作成・タイプ等の秘書業務の代行等を目的とする会社であり、ワコーは原告代表取締役が代表取締役を兼任する人材派遣、各種業務の代行等を目的とする会社であって、原告の一〇〇パーセント子会社であること)は当事者間に争いがない。

原告の請求原因2(一)(原告が、昭和五年以来株式会社チェスコムが開発した転送機および転送元識別機〔RX〕を使用した原告主張の内容の電話による秘書代行業務を、入会金三万円、業務委託料月額金三万円で行っていること)は、証人軽部潔の証言および同証人の証言により成立を認め得る〈書証番号略〉(原告のパンフレット)により、これを認める。右認定に反する証拠はない。

また、原告の請求原因2(二)(被告笠原五夫、同笠原幸子が、昭和六〇年一二月ころ以降株式会社テルステーション名義で電話代行業務の営業を開始し、昭和六二年九月ころに転送機二台、RX一台を、同六三年三月ころにRX二台をそれぞれ株式会社チェスコムから購入したこと)、同2(三)(被告笠原洋人がワコーに昭和六二年三月二七日に入社し、平成元年四月三〇日に退職した者であり、その間原告に出向していたものであること、および被告安田雅一が昭和六一年七月七日にワコーに入社して、同時に原告に出向し、平成元年三月からワコーの子会社である株式会社日本テレコメディアにおいてテレマーケッティングの営業に従事し同年八月一五日に退職したものであること)は、いずれも当事者間に争いがない。

二そこで、原告の請求原因3について検討するに、

1  まず、証人鈴木信秀の各証言により成立を認め得る〈書証番号略〉に同証人の証言および被告安田雅一本人尋問の結果によれば、別紙一覧表記載の日時ころ、株式会社テルステーション名義で、被告笠原洋一、同安田雅一が別紙一覧表記載の原告の顧客に対して、その具体的な勧誘の内容はともかくとして、原告との契約を株式会社テルステーションとの契約に切替えて欲しい旨の勧誘をしたことが認められる。右認定に反する被告笠原洋人本人の供述は採用しない。具体的な勧誘内容については右各証拠のみでは、原告主張のとおりと認めるには足りない(なお、別紙一覧表のうち、六の平成元年一〇、一一月ころ被告安田雅一が株式会社ジェイ・コミュニケイション・アカデミィを訪問したことは当事者間に争いがない。また、成立について争いのない〈書証番号略〉、被告笠原五夫本人尋問の結果によれば、株式会社テルステーションが設立されたのは平成二年に至ってからであり、当時は、被告笠原五夫の商号としてこれを使用していたことが認められる。)。

2  ところで、被告笠原洋人、同安田雅一は、株式会社ワコーと労働契約を締結して、原告に出向していたのであるから、原告に対して労働給付義務に付随する義務として服従義務、誠実義務、競業避止業務を負っていることは原告主張のとおりである(原告の請求原告3(三))。したがって、別紙一覧表一、二の行為(被告笠原洋人が原告に在職中の行為)は、労働契約上の債務不履行に該当する。

問題は、労働契約終了後にいかなる義務を負担するかである。

原則的には、営業の自由の観点からしても労働(雇傭)契約終了後はこれらの義務を負担するものではないというべきではあるが、すくなくとも、労働契約継続中に獲得した取引の相手方に関する知識を利用して、使用者が取引継続中のものに働きかけをして競業を行うことは許されないものと解するのが相当であり、そのような働きかけをした場合には、労働契約上の債務不履行となるものとみるべきである。

右の観点から、本件についてこれをみると、証人軽部潔の証言に被告笠原洋人、同安田雅一各本人尋問の結果によれば、(1) 原告が行っているような態様の電話代行業務は、代行業務を必要とする顧客を発見し、その顧客にチェスコム製の転送機を購入してもらうことがもっとも重要であること、(2) 原告は都バスやタクシー広告等に相当の経費をかけて代行業務を必要とする顧客の発見に努めていること、(3) 株式会社テルステーションでは電話帳に広告を載せるほか、ダイレクトメールやテレコール等で宣伝をしていたが、これらの方法では殆ど顧客を獲得することはできなかったこと、(4) そこで、被告笠原洋人、同安田雅一は、原告の顧客であって、既に転送機を購入済みであることを原告に在職中に知った相手方に対して訪問をして、原告より低廉な料金を提示して原告から株式会社テルステーションへの切替えを勧誘する方法を採っていたこと。以上の各事実を認めることができる(右認定を左右するに足りる的確な証拠はない。)。

右によれば、右被告笠原洋人、同安田雅一の別紙一覧表三ないし七記載の各行為(別紙一覧表三、四記載の各行為も被告笠原洋人本人尋問の結果によれば、株式会社テルステーションの営業は被告笠原洋人、同安田雅一のみであることが認められるから、被告笠原洋人、同安田雅一のいずれかの行為であると認める。)は、いずれも原告に対する労働契約上の義務違反となる。

しかも、〈書証番号略〉および同証人の証言によれば、被告笠原洋人は、当時既に父である被告笠原五夫が株式会社テルステーション名義で電話代行業を行っているのに、殊更にこれを秘して株式会社ワコーに入社して原告に出向し、平成元年に退職するに際しても、退職後は株式会社テルステーション名義で電話代行業を行う予定であるのに、殊更にこれを秘して退職をしているのであって(被告笠原洋人は入、退社に際しては、いずれも、被告笠原五夫が株式会社テルステーション名義で電話代行業を行っていること、退職後は株式会社テルステーション名義で電話代行業を行う予定であることを告知している旨供述するが、採用しない。)、この事情からみると、意図的に原告の営業上の秘密を獲得する目的で原告(もしくはワコー)に入社したものと推認されるところであり、その義務違反の態様は極めて悪質なものといわざるを得ない。

3  そこで、被告笠原五夫、同笠原幸子の責任についてみるに、被告笠原五夫本人尋問の結果によれば、被告笠原五夫は、被告笠原洋人がワコーに入社する以前はリレーホンというシステムで電話代行業を行っていたが、そのころからチェスコムのRXを使用したほうが合理的であるという説明を受けていたこと、原告が電話代行業を業としていることを知りながら息子である被告笠原洋人をワコーに入社させたこと、被告笠原洋人が原告を退社後は、同被告に株式会社テルステーションの電話代行業をすべてまかせたことの各事実が認められるところ、右各事実によれば被告笠原五夫は、被告笠原洋人に前記債務不履行を行うことを明示的もしくは黙示的に命じたものと推認するのが相当であり、そうとすれば、被告笠原五夫は、いわゆる第三者の債権侵害として原告に対して不法行為の責任を負うものというべきである。

被告笠原幸子については、その責任を認めるに足りる事情を窺うことができない。

三原告の請求原因4についてみる。

1  原告の請求原因4(一)(原告が契約している顧客から株式会社テルステーションとの契約に切り替えた顧客が三六件であること)は、〈書証番号略〉に同証人の証言によりこれを認める。この認定を左右するに足りる証拠はない。

なお、証人鈴木信秀の証言および被告安田雅一本人尋問の結果によれば、この顧客切り替えの事実を確認するために、株式会社テルステーションの事務所に数人の原告の従業員が訪れたことがあることが認められ、被告安田雅一本人は、その際のいざこざにより被告安田雅一、同笠原洋人が原告の従業員から暴行を受けて負傷した事実がある旨供述するが、仮に、同被告の供述するとおりとしても、それを根拠とする相殺の主張のない本件にあっては、もとより本件請求の当否には影響しないところである。

2  原告の請求原因4(二)(原告の損害)についてであるが、原告に対する顧客の業務委託料が月額金三万円であることは前記認定のとおりであるが、右金額(売上)を単純に原告の純利益とみることができないことはいうまでもない。

なるほど、前記認定の原告の業務内容からすれば、一旦顧客を獲得すればそれほどの経費をかけることなく業務委託料を得ることができるものであることはこれを窺うことができるけれども、それでも全く経費がかからないとは考えられない。機械の保守・点検経費やオペレーターの経費その他の一般管理費等の経費がかかることは当然である。しかるに、本件にあっては、そのような経費を判断するための証拠は一切提出されてはいない。

また、原告は、一年間分の業務委託料を請求するが、一年間とする根拠は首肯し得るものがない。

3  してみれば、原告主張の損害をそのまま肯定することはできないといわざるを得ないが、損害が生じたこと自体は、明らかである。そこで、前記業務委託金(月額三万円)、契約を切り替えた件数(三六件)および株式会社テルステーションの受託金(原本の存在および〈書証番号略〉によれば、月額金二万円であることが認められる。)その他本件に顕れた諸般の事情を勘案して、これを金五〇〇万円と見積もることとする。

四原告の請求原告5について判断する。

1  まず、別紙一覧表記載の虚偽事実ないし中傷についてみるに、すくなくとも、別紙一覧表の二、七、八記載の部分については、なんら虚偽事実の告知も原告に対する中傷も含まれてはいないといわざるを得ない。これらは、いずれも原告と公正な自由競争をしていることを前提とすればなんら問題はない。

2  次に、別紙一覧表記載その余の部分についてみるに、その記載は、要するに、原告の従業員が変わること、原告はサービスが悪いことの二点に集約されるところである。

しかしながら、真に被告笠原洋人や被告安田雅一がそのような虚偽事実を告知したかについては前記のとおり〈書証番号略〉および証人鈴木信秀の証言をもってもこれを確定し難いところでもあり、かつ、右の原告の従業員が変わること、原告はサービスが悪いことを告知することが公正な自由競争の範囲を大きく逸脱する違法なものともにわかに思い難い。

したがって、この点についての原告の請求は、これを認めない。

五なお、原告の請求の1(被告らに対して、原告が電話による秘書代行業務委託契約を締結している顧客に対し、被告との契約の締結および締結方の勧誘をしてはならないとの請求)について考えるに、(1) 前記のとおり、被告らは電話による秘書代行業務を株式会社テルステーションという法人(本訴の当事者ではない。)により行っているのであり、被告らが個人として行っているわけではないから、そもそも、この請求は意味をなさない(訴えの利益がない。)。(2) 請求中において原告の顧客が特定されていないから、請求は不特定といわざるを得ない。

したがって、その余の点を判断するまでもなく、原告の右の請求は不適法として却下を免れない。

六よって、原告の本訴請求中、前項の請求は却下すべきであり、その余の請求については、損害賠償として、被告笠原五夫、同笠原洋人、同安田雅一に対して連帯して、金五〇〇万円およびこれに対する平成二年五月三日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるので、これを認容することとし、その余の右被告らに対する請求および被告笠原幸子に対する請求はいずれも失当として棄却することとして、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条を、各適用して、主文のとおり判断する。

(裁判官綿引穣)

別紙一覧表

一 昭和六三年夏頃

被告笠原洋人が有限会社プレミア事務所を訪問

テルステーションの社員と称して、「当社の方が安い」と申し向けた。

二 昭和六三年一一月ころ

被告笠原洋人が株式会社ケイ・ゼット・エム・インターナショナルを訪問

「原告の内部について確実な情報を提供してくれる人を知っている。内部で問題が発生して混乱しているらしく、パートもどんどん退社しているらしい。料金も二万円と安いので、切り換えてほしい。」

三 平成元年九月ころ

氏名不詳のテルステーション社員がHSG企画を訪問

「原告より安い料金で、きめ細かい対応ができる。原告は従業員が変わる。サービスが悪い。」

四 平成元年九月ころ

氏名不詳のテルステーション社員が株式会社マーケティングシステムを訪問

「原告にいたが、内部の問題が色々あったので退社した。原告はサービスが悪く、オペレーターが変わり、入ったばかりの者がやるので間違いが多い。」

五 平成元年九、一〇月ころ

被告安田雅一が京都電気株式会社東京営業所を訪問

「原告を退社したので挨拶に来た。大きくなると本来のサービスがどんどん低下していくので、お客様に申し訳ないと思い、退社した。テルステーションはシステム的には原告と同じです。」

六 平成元年一〇、一一月ころ

被告安田雅一が株式会社ジェイ・コミュニケイション・アカデミィを訪問

「原告をご利用ですね。システムは全く同じで、しかも料金は安い。原告にいたので原告の内情は充分知っている。何かと不満が多いのではないか。原告はテレマーケッティングに力を入れているので秘書センターは相当手を抜いているのではないか。」

七 平成元年一二月

被告安田雅一が有限会社第二科学研究所を訪問

「値段が安くなるから、原告との契約を変更しないか。」

八 平成元年一二月

被告安田雅一が有限会社コスモ企画を訪問

「原告より安く取り次ぎます。入会金もいりません。」

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